Forty Three point Two

やってらんねえよな

冬季休業前 キャンパスにて

 冬季休業前の、キャンパスが好きだ。大学の、いわゆる冬休みを冬季休業と呼ぶのか否かは知らないが、人の少ないキャンパスは好きだ、と思った。それは下校時間直前の、人気のない高校の雰囲気に似ているからなのかも知れない。

 僕は2限が始まる時間に起きて、結局3限が始まって30分も経ってから教室にたどり着く行程で大学に向かっていた。駅から大学まで歩きながら、自動販売機の前を通り過ぎ、カルピスソーダが安く売られていることに気がつき、恋人がカルピスソーダを好きなのを思い出しながら、早足で教室に向かった。

 教室についても、入り口近くの数人の学生が一瞬振り返るだけで、下を向いて話し続ける教授は、遅れて入って来た僕に気がつくそぶりもない。遅刻に寛大なその教授は、昼食後の学生が興味を持って聞くような話はせず、子守唄のように心地よいペースで道徳教育について語っていた。学生は教室の後ろの方の席にかたまってスマホをいじったり、突っ伏して居眠りを決め込んだり、思い思いに退屈な午後のひとときを過ごしていた。僕はMacBookを取り出して、抱えていた幾つかの済ませなければならない用事と確認事項をに取り組んだ。それらがちょうど終わる頃、教授の「今日はこのくらいにしましょう」の声が古いスピーカーを通して、教室に拡散された。出席表の回収はされなかった。

 授業が終わった後、僕は図書館へ向かった。冬休みは短くて、今持っている本で十分終わってしまいそうだったけど、夜ある飲み会まで暇だったので、金がかからない時間の潰し方として適するであろう選択肢を選んだつもりだった。結果として、ちょうど読んでみたいと思っていた本を思い出し、検索をかけたがすべて貸出中であったために、どうしてもその本を手に入れたくなった僕は生協で本を買う羽目になったが。

 目当ての本を手に入れ、最初の章を読み終えた頃、自分が昼食を食べていないことに気がついた。空きっ腹にお酒をいれるのが嫌だったので、学食で軽く食事を済ませることにした。17時過ぎの学食は、談笑する学生の数もまばらで、年末の営業予定表なんかを張り出していて、僕はその雰囲気をひどく気に入った。入学当初こそ利用すれど、最近は使わなくなったな学食は季節によって違うのか、僕の知っているメニューは殆どなかった。知っているメニューの中からカツカレーを選んだのは、高校時代の学食を思い出したからだろうか。学生アルバイトなのか、ハキハキ話すことができなさそうな店員が盛ってくれたカツカレーは、カツがメニューの写真のようには切れていなかったし、一切れサービスしてくれるなんてこともなかった。安っちいチキンカツではあったけれど、たまに一切れサービスしてくれた、無愛想な高校の学食のおばさんが、ひどく懐かしく感じられた。