Forty Three point Two

やってらんねえよな

クリスマス狂騒曲

 狂った様を言い表したくて、「きょうそうきょく」と打って狂想曲と変換しようとした僕のMacBookには「狂騒曲」の文字が現れて、これほどぴったりな言葉はないな、と歓喜した。音楽の用語に対する知識は皆無だけれど、日本のクリスマスは狂っていて騒がしいもので、この漢字をあてるのがぴったりだろう。狂ってないクリスマスがあるのかどうかは知らないけれど。

 クリスマスイブはどこに行っても人しかいなくて、ここは本当に日本か、と疑いたくもなったし、逆に日本らしいなと変に安心するところもあった。東京の人混みは、人混みであるけれど整然としているところがあるというか、どこか暗黙のルールがあって、それが東京を大人の街にしている要因でもあるのだろうけれど、僕の住む街は子連れの家族が多くて、人の動きを予測するのがとても難しい。人混みに揉まれ続けて疲れたからか、その日の午後はひどい頭痛に苛まれた。ひどい夜だった。

 次の日目覚めて、ようやく頭痛がひいたことと自分が眠っていた事に気がついた僕は普段より軽い足取りでアルバイトに向かった。何の変哲もない日曜日であった。そこにはクリスマスだなんて西洋気取りの僕らから見れば異端なことを言い出す輩など1人もいなくて12月25日日曜日は、多数の来客と急に病欠した店員によって忙殺された。アルバイトが終わった頃には、(正確にはアルバイトが終わる一時間半くらい前からだけど)立っているのがやっとなほどふくらはぎが悲鳴をあげていた。

 その日の恋人もいつもと変わらなくて、僕達のなかにクリスマスは存在しなかったし、存在すれば僕たちは僕達ではなくなるのだろうなと思った。贈り物を送りながらも、クリスマスだなんて言い訳せずに物を贈れる関係がいいよな、とも思った。